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MAI MURAKAMI SPECIAL INTERVIEW

東京オリンピック体操競技種目別で、日本の女子では史上初となる銅メダルを獲得した村上茉愛選手へのスペシャルインタビュー第2弾。
短い時間ではありましたが、ケガとコロナ禍の中で苦しんだ大会前のこと、オリンピック期間中の心境、次代を担う後輩たちへの熱い想いなどをざっくばらんに語っていただきました。

[ 聞き手:後藤晃宏社長 ]

ほどよい緊張感の中で臨んだ五輪

後藤このたびは銅メダル、おめでとうございます!女子個人では日本初ということで、新たな歴史を作ってくださった。本当にすごいことですね。

村上ありがとうございます。

後藤東京で、しかも無観客の中でというのはいかがでしたか?

村上時差がないのはすごくありがたかったのですが、観客がいないせいか、日本にいるけど日本にいる実感が薄いというか、「ここは本当に日本なの?」という感じでした(笑)。そのため最初は少し戸惑いもありましたが、演技が進むにつれてすっかり慣れて、ほどよい緊張感を味わうことができました。

後藤あまり緊張しているようには見えませんでしたよ。

村上思い入れが強かったので実はすごく緊張していたのですが、そう見えないよう明るく振る舞っていました。

後藤団体予選の段違い平行棒で落下された時は驚きました。ケガなどはしませんでしたか?

村上落下した時は大丈夫でしたが、その後決勝の段違い平行棒で肘が曲がった時は痛みがありました。ただ、逆にその痛みのおかげで緊張感が紛れ、平常心になれたのがかえって良かったかも知れません。なんとか気持ちで乗り切れました。

演技直前や演技の最中に考えていたこと

後藤演技直前や演技の最中はどのようなことを考えているのですか?

村上団体戦の時は、「みんな画面越しに観てくれているかな…?」などと考えていましたが、個人総合の時はメダルを見据えてやっていたので、少し緊張感がありました。ただ最後の種目別決勝は、「あと1回しかないのだから楽しみたい!」と思って本番に臨めたので、案外「無」の境地というか、あっという間に終わった感じでした。

後藤演技が終わって点数が出る前はどんな心境でしたか?

村上心臓の鼓動のような「ドクドク」という効果音が会場に流れるのですが、あれが本当に心臓に悪くて…(笑)、緊張してなかったのに緊張させられる感じでした。

後藤そして結果は、メルニコワ選手とメダルを分け合うことになりましたね。

村上全く同じ点数というのはすごく珍しいことで、結果が出るまではちょっとヒヤヒヤしました。

大会前の苦しさ、そして家族への想い

後藤この2年ほどはケガがあったり、コロナ禍で思うように練習ができなかったりと、いろいろ大変だったことでしょう。どのような想いで過ごされていましたか?

村上いろんなことが耳に入ってきて、少しネガティブな気持ちになることも多かったので、たくさん練習してその気持ちを解消するしかないと自分に言い聞かせていました。ただ試合期間に入ってしまえば、もうそこに集中するというか、あまり周りを気にせずリラックスして臨めたと思います。

後藤そんなご苦労や努力を間近で見て来られたご家族も、大変喜ばれたことでしょうね。

村上母は美容室を経営しているのですが、メダル獲得の翌日から花束がいろんな人からお店に届いたり、連日多くの方が「おめでとう!」と言いに来てくださったりしたようなので、「幸せすぎて、もういつ死んでもいい」と。それくらい嬉しい想いをしてもらえてよかったですし、ふだん恥ずかしくて言えない「ありがとう」を素直に言えたので、とてもいい時間を過ごせました。

次の世代へバトンをつなぐために

後藤最大の目標だった東京オリンピックが終わって、どんな気持ちで日々体操と向き合っておられるのでしょうか?

村上やはり次の時代を担う後輩たちに頑張ってほしい、強くなってほしいという気持ちが一番です。そのためふだんから自分の持っている知識や技術、緊張した時の対処法など、いろんなことを伝えていくようにしています。昔は周りに対するライバル意識もあったので、あまりそういうことはやって来なかったのですが、今は次の子たちが強くなるために、私から学べることがあるならたくさん学んでほしいなと。

後藤次の世代にバトンをつないでいこうと。

村上はい。日本の女子が団体でもっと強くなるために何かできることはないかなと思いながら取り組んでいます。

後藤すばらしいですね!これからも頑張ってください。

(※対談は2021年8月23日に行われたものです。)